金型の品質向上と生産性向上

靴底成形用金型加工における工具寿命と加工安定性の向上を実現するWXL-SBD

Puhua Xu | OSG Shanghai

射出成形は金型を用いた成形方法の一つです。プラスチック樹脂を加熱溶融し、金型に射出します。その後冷却し、金型の形状に硬化させることにより、プラスチック部品を製造します。射出成形で使用する金型の材質は、一般的に調質鋼・プリハードン鋼・アルミニウム合金およびベリリウム銅合金です。

ゴム靴やビーチサンダル、靴底などは、主に射出成形によって製造されます。近年、中国福建省にあるFuyan Plastics社(富岩塑料股份有限公司)では、靴の金型生産の生産性向上を求めていました。同社は2012年に設立され、靴の金型をメインとしたプラスチック金型の製造を専門としています。 現在、従業員約170人、工場の敷地面積は6,000 平方メートル、そのうち約1,500平方メートルが金型製造専用です。会社が成長を続ける中、同社は生産能力の増強を目指し、30台のマシニングセンタを導入しました。

中国福建省にあるFuyan Plastics社の加工設備。

Fuyan Plastics社では、月に少なくとも50型の金型を生産しています。各金型は大量生産ではなく、製品ごとに生産され、金型毎に大きさも異なります。同社は、硬さ約32~35 HRCのプリハードン鋼738H (AISI P20相当)材の靴の金型加工で、安定した加工面粗さが得られないことが課題でした。求める仕上げ面粗さの公差はRa 1.6です。金型は立形マシニングセンタで加工されます。

硬さ約32~35 HRCのプリハードン鋼738H (AISI P20相当)材で製作された靴の金型。

当初、Fuyan Plastics社は中国メーカのボールエンドミル R3を主に使用していましたが、仕上げ面が悪く工具寿命も短いという問題を抱えていました。そのエンドミルは、加工時間約10時間で摩耗し、加工された金型の仕上げ面粗さは要求精度を満たしていませんでした。加工途中でエンドミルが欠損し、ワークの表面に影響を与え、再加工が必要になるケースも発生しました。同社は、このエンドミルの性能に不満を抱いており、性能および工具寿命、安定性を向上させる新しいエンドミルを探していました。

Fuyan Plastics社は販売代理店を通じてオーエスジーに技術支援を依頼しました。オーエスジーは同社を訪問し、用途と加工環境の詳細を確認し、高性能2刃超硬ボールエンドミルWXL-SBD R3 (EDP# 30190158) を提案しました。WXL-SBDはOSG (Shanghai)のオリジナル工具としてプリハードン鋼および調質鋼の高速加工に優れた独自の仕様を持ったWXLエンドミルシリーズの1つです。優れた耐久性を実現するWXLコーティングを採用しています。

高性能2刃超硬ボールエンドミルWXL-SBD R3 (EDP# 30190158) 。WXL-SBDはOSG (Shanghai)のオリジナル工具としてプリハードン鋼および調質稿の高速加工に優れた独自の仕様を持ったWXLエンドミルシリーズの1つです。優れた耐久性を実現するWXLコーティングを採用しています。

Fuyan Plastics社は、エンドミルを評価する上で工具寿命を22時間と設定しました。切削条件は、切削速度283 m/min (15,000 min-1)、送り速度3,000 mm/min、軸方向の切込み深さap=0.07 mm半径方向の切込み深さae=0.1 mmです。 切削油剤は水溶性切削油剤を使用します。WXL-SBDは、設定された工具寿命を達成し、規定の加工面粗さも確保することができました。使用後のWXL-SBDの摩耗は少なく、継続使用することも可能です。 Fuyan Plastics社は、エンドミルの性能と安定性を検証するため、さらに3 軸と 5 軸のマシニングセンタで試験しました。WXL-SBDは、予想をはるかに超える安定した性能を発揮しました。

左から:Mazak製5軸立形マシニングセンタVARIAXIS i-600。Mazak製3軸立形マシニングセンタVCN-530C。

最終的にWXL-SBDは工具寿命を大幅に改善することで、工具交換の回数を減らしました。さらに、工具摩耗による仕上げ面粗さの不具合も解消したため、再加工の必要もなく、後工程の負担低減も実現しました。

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