航空宇宙用部品のインコネル積層造形後の二次加工において超硬防振型エンドミルAE-VMLによる安定した工具寿命と工具コスト削減の実証
インコネルは高強度、高耐蝕性を持ったNi基合金で、航空宇宙産業の分野でよく使用されています。インコネル製の複雑な部品のフライス加工は、材料の高い引張り強さのために工具がすぐに摩耗してしまいます。摩耗や欠け、折損などが生じるため、高難易度かつコストのかかる加工プロセスとなっています。また、工具の寿命が短くなるだけでなく、加工時の残留応力や加工硬化性の影響により部品が反ってしまう点も課題の一つです。近年、従来の加工方法に代わる新たな加工方法として、アディティブ・マニュファクチャリング(金属積層造形)が注目されています。アディティブ・マニュファクチャリングは、材料を削り取るのではなく、層ごとに部品を作るため、部品の複雑さの点で設計の自由度が高くなります。さらに、アディティブ・マニュファクチャリングは、非破壊検査によって高価な耐熱合金の材料の無駄をなくし、能率の向上とコスト削減を実現できます。しかし、新しい方法には、新たな課題も生まれます。アディティブ・マニュファクチャリング後の二次加工は、肉盛り溶接部品の加工と非常によく似ており、工具に負担をかけ、加工時間も長くなります。

自動車産業におけるエンジン部品の搬送用に作られたアディティブ・マニュファクチャリング製のクランプアーム。これらの部品は、従来の製造方法と比較して、強度対重量比が大幅に改善され、大きなメリットをもたらします。
PARARE GmbHは金属とプラスチックの積層造形加工を専門とする部品メーカーです。航空宇宙産業向けとなる、非常に複雑なインコネル部品のアディティブ・マニュファクチャリング加工後の二次加工の改善を求めていました。2017年に設立された、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州に拠点を置く同社は、積層造形技術の活用を得意とする企業です。PARARE GmbH社は、アルミニウム合金やステンレス鋼、チタン合金、インコネル、工具鋼、プラスチックなどの素材を使用した、さまざまな産業向けの革新的な部品を製造しています。

PARARE社製航空宇宙部品。PARARE社はアルミニウム合金やステンレス鋼、チタン合金、インコネル、工具鋼、プラスチックなどを素材に、さまざまな産業で活躍する革新的な部品を製造しています。
課題となるアディティブ・マニュファクチャリングによる部品は、インコネル625とインコネル718、アルミニウム合金で作られています。バッチサイズは通常、1個から50個までです。部品はHERMLE社の5軸マシニングセンタ(主軸タイプHSK-A63)で加工されていました。
PARARE GmbH社は当初オーエスジーの切削工具を知らず、他社の超硬ソリッドエンドミルを使用していましたが、性能が安定せず、コストも非常に高くなっていました2020年9月、PARARE GmbH社に生産責任者として入社したMichael Meyer氏は、過去にオーエスジーの切削工具で好感触を得ていた経験から、オーエスジーの工具を数本テストすることにしたのです。アプリケーションの詳細な評価の後、OSGドイツ技術営業担当のBruno GöpfrichがAE-VML(φ16×64)を持ち込んで切削試験を行いました。

AE-VMLは様々な加工に対応するため、加工効率と加工品位を追求した超硬防振型エンドミルAE-VMシリーズの1製品です。
ロング形AE-VMLは、超硬防振型エンドミルAE-VMシリーズの1製品で、幅広い被削材に対して、高い加工効率と優れた仕上げ面精度を実現するために設計されました。鋭いポジ刃形により切削抵抗を大幅に低減し、過酷な切削条件下でも工具の摩耗や被削材への損傷を最小限に抑えることが可能です。加えて不等分割刃と不等リードにより、高い防振効果が得られます。さらに、チップブレーカタイプは独自の形状により、切りくずを細かく分断することで排出がスムーズになり、安定した性能を発揮することができます。DUARISEコーティングは、優れた潤滑性・耐摩耗性・高温耐酸化性により、工具寿命を向上させます。AE-VMシリーズは、ステンレス鋼や鋳鉄、炭素鋼、合金鋼、焼入れ鋼など幅広い被削材に対応できるよう、様々な仕様のラインナップを用意しています。

右から、PARARE GmbH社の代表取締役Sven Skerbis氏、PARARE GmbH社の生産責任者であるMichael Meyer氏、OSGドイツの技術営業担当Bruno Göpfrich。ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州フリッケンハウゼンのPARARE GmbH社製造工場にて写真撮影を行いました。
切削試験は大成功でした。守秘義務の関係上、詳細は公開できませんが、AE-VMLは従来品に対して2倍以上の工具寿命を達成し、工具コストを80%削減することができました。
超硬防振型エンドミル ロング形AE-VMLおよびアディティブ・マニュファクチャリング後の二次加工向け切削工具ソリューション、OSGドイツとPARARE GmbH社の詳細
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