銅電極用DLC超硬エンドミルAE-LNBD-N

バリのない美しい銅電極を削り出す

恒岡 隼人 オーエスジー株式会社 エンドミル開発エンジニア

OSGの非鉄加工用エンドミルに銅電極用DLC超硬エンドミル 高精度仕上げ用2刃ロングネックボールタイプAE-LNBD-Nが追加されました。AE-LNBD-Nは形彫り放電加工で使用する銅電極または銅タングステン電極の加工に最適化された仕様で、バリのない美しい銅電極を削り出すことができます。これは「高精度」かつ「高品質」な金型を製作する上で、必要不可欠な要素です。

近年、ものづくり技術の発展とグローバル化は目まぐるしいスピードで進んでおり、それは金型業界においても同様といえます。ISTMA(国際金型協会)によると2008年から2016年の8年間で、世界の金型生産額は約3割増加しました。しかし、かつて金型生産額が世界一だった日本は2009年のリーマンショック以降落ち込み、現在ではその座を中国に譲っています。その中国は目覚ましい経済発展や自動車の生産台数増加の背景に支えられ、2016年の金型生産額は約250億ドルと、2008年からほぼ倍増の規模にまで成長しました。

AE-LNBD-Nのメインターゲットとなる銅電極・銅タングステン電極は、主にプラスチック用金型の製作に使用されます。プラスチック用金型の生産についても、その多くが日本から中国や東南アジア諸国へと、生産の場が移管している状況です。それでも、日本国内においては金型生産額の約3割をプラスチック用金型が占めており、プレス金型に次ぐ割合となっています。高い精度を求められるプラスチック用金型の多くが、技術力に優れた日本国内で作られているためです。最終製品となるプラスチック製品は、デザインの複雑化や小型化が進み、金型の「高精度」「高品質」化が求められています。それは形彫り放電加工に使用される銅電極・銅タングステン電極も同様に、「高精度」「高品質」化が求められるということになります。

銅電極・銅タングステン電極の加工における「高精度」「高品質」化がどのようなものか実際に考えてみましょう。まずは高い形状精度や、長時間の加工でも寸法変化が少ない事があげられます。さらに優れた加工面粗さや、バリが無いことも重要です。AE-LNBD-Nは、これらの電極加工へのユーザーニーズを満たすため、次の3点に着目して開発を進めました。まずは優れたワーク面品位を実現する「シャープな切れ刃」。次に、高精度な電極加工を実現する「高いボールR精度」。そして長時間工具の摩耗を抑えてバリの発生および寸法の変化を抑制する「高い耐久性」です。

OSGの非鉄加工用エンドミルに銅電極用DLC超硬エンドミル

「シャープな切れ刃」

図1に示すように、AE-LNBD-Nは他社品と比較して、ボール二番面粗さを向上させました。刃先稜線がシャープになり、切れ味が向上したことで、優れたワーク面品位を実現します。

図1 二番面粗さの比較

「高いボールR精度」

図2に示すように、AE-LNBD-Nは従来品と比較して、高いボールR精度を採用しています。そのため、高精度な電極加工が可能です。

図2 ボールR精度

「高い耐久性」

硬度が高く、耐摩耗性に優れたDLC-IGUSSコーティングを採用しました。CrNコーティングや、鋼材の加工に多用されるCr系のコーティングと比較して、圧倒的な耐摩耗性を発揮します(図3)。

図3 タフピッチ銅(C1100)耐摩耗性比較試験

また、長時間の加工でも摩耗の進展を抑え、「シャープな切れ刃」と「高いボールR精度」を保ち続けることで、従来品と比較して長時間バリの発生を抑制し、寸法変化を抑えることが可能です。(図4)

図4 タフピッチ銅加工試験データ

金型業界で進む「高精度」「高品質」化は、年々そのニーズが高まってきており、今後はさらに加速することが予想されます。優れた精度と耐久性をもったAE-LNBD-Nは、銅電極・銅タングステン電極加工における新たなスタンダードとなっていくでしょう。

AE-LNBD-Nの詳細