原田明、オーエスジー エンドミル開発チーム
近年、電気自動車や産業用ロボット、半導体製造装置といったアルミニウム合金を多用する分野の市場が拡大し、アルミ合金加工の需要が高まってきています。
一言でアルミ合金加工と言ってもワークのサイズや加工形態は多種多様であり、用途によって工具に求められるスペックは異なります。今回、様々なニーズに対応するために3種類の製品を開発しました。
スタンダードタイプ AE-TS-N, AE-TL-N
これまでアルミニウム合金などの非鉄金属加工用のエンドミルといえばノンコートの2枚刃や3枚刃が一般的であり、3枚刃でDLCコーティングが施されたものはハイスペックではあるものの、「高価」であるというのが常識とされていました。

今回そのような常識を打ち破るべく開発したAE-TS-NとAE-TL-Nは、スタンダードタイプと称しながらも3枚刃且つDLCコーティングが施されており、非鉄金属加工において最も適したスペックを有しています。
さらに従来の非鉄用DLC超硬エンドミルと比べ圧倒的に手ごろな価格となっており、従来のノンコート品と比べても競争力のある価格に設定しました。
高いスペックでありながら、手ごろな価格設定を実現したのは、開発段階から製造コストを強く意識し、生産性の高い仕様設定と、製造工程の徹底的な効率化です。 図1に従来品との溝形状の比較を示しています。総形砥石を使用し溝研削時間を短縮することで生産コストを低減しました。また、従来品よりも芯厚を大きくすることで剛性を向上させつつ切りくず排出性も確保できる最新の溝形状となっています。
図1 AE-TS-Nと従来品の溝形状の比較

AE-TS-Nは刃長1.5Dで首下長は3Dあり、剛性を確保しながらも深い部分まで加工が可能な設計になっています。
AE-TL-NはAE-TS-Nのロング刃長タイプであり、刃長3Dタイプと5Dタイプをラインナップしています。側面切削、仕上げ加工に適した工具仕様です。 このように、用途に応じて3種類の仕様から選択することが可能です。
高機能タイプ AE-VTS-N
AE-VTS-Nは高能率加工を求めるお客様向けに開発された製品です。

不等リード不等分割にすることで、高能率加工でもびびりが発生しにくく、Z軸方向への突込み切削やランピング加工も得意としています。更に底刃さらい刃と底刃微小二番を採用することで、能率のみならず、加工面品位にもこだわった仕様となっています。
また、コーティングに関してもAE-TS-NとAE-TL-Nは切れ味重視のDLC-SUPER HARDコーティングを採用しているのに対し、AE-VTS-Nには最新のDLCコーティングであるDLC-IGUSS(アイグス)コーティングを採用しています。
DLC-IGUSSコーティングはDLC-SUPER HARDコーティングよりも膜厚が厚く耐摩耗性に優れるため、高能率加工を行うAE-VTS-Nに最適なコーティングであると言えます。
この3製品はアルミニウム合金のみならず、銅やマグネシウムといった非鉄金属全般に適用可能であり、アクリル樹脂のような非金属に対しても加工実績があります。これらの加工にはこれ1本あれば対応可能だと自信を持ってお勧めできます。
また、φ12を超える大径のサイズにおいては、ヘッド交換式エンドミルPXMシリーズのPXALを同時に用意しました。

これまでの非鉄用エンドミルの常識を覆した非鉄用DLCエンドミルシリーズを予算と用途に応じてお使い頂けますと幸いです。
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