小型部品加工

小径油穴付き超硬ドリルADO-MICROと超硬フラットドリルADFによる小型部品の生産性と工具寿命の向上

Yoshi Saito | OSG Thai

小型部品の機械加工は製造業界では決して珍しいことではありませんが、部品のさらなる小型化と軽量化の傾向は加速し続けています。自動車、航空宇宙、エレクトロニクス、医療などの産業では、小型部品の機械加工が必要とされます。

一般的に、直径が25.4 mm未満の加工物は小型部品とされています。 その中でも部品の直径が0.5mm未満のアプリケーションは、マイクロマシニングに分類され、 軽量化と材料の削減により、ドリルで加工する穴もより小さくなっています。小型部品の加工では、工具の折損は一般的な懸念事項です。わずかな振動でも工具が折損する可能性があるためです。 さらに求められる穴の精度が厳しいため、小型部品の機械加工に使用される切削工具には、切れ味、高い表面品質、精度、および安定した性能が求められます。

高度な研削技術により生産されるオーエスジーの工具は、さまざまなソリューションを提供することで、増加する小型および微細加工のニーズに応えます。 オーエスジーの小径および極小径の工具は、高精度シャンク、最適な工具仕様、工具材質、および用途に合わせたコーティングの選定により、小型部品およびマイクロパーツの安定した高精度加工を可能にします。

タイの大手精密部品メーカは、高圧ポンプ部品と自動車部品の製造においてオーエスジーの最新の穴あけ技術を採用しました。その結果、工具の折損がなくなり機械加工を安定させることができました。

Global-Thaixon社の製造工場はタイのチャチェンサオにあり、生産床面積は 約32,700m2です。

1990 年に設立された Global-Thaixon Precision Industry Co., Ltd. (以下Global-Thaixon社) は、自動車、3C産業(Computer(コンピュータ)Communications(コミュニケーション)Consumer Electronics(コンシューマー・エレクトロニクス))、医療など世界のさまざまな産業向けの精密部品を製造する大手メーカです。 Global-Thaixon社の製造工場はタイのチャチェンサオにあり、生産床面積は約32,700m2で、900人のスタッフが働いています。

Global-Thaixon社は、あらゆるフライス加工および旋削加工を400台近くのCNCの機械が24時間体制で対応します。

Global-Thaixon社では、400台近くのCNC機械があらゆるフライス加工および旋削加工を24時間体制で対応します。 同社の工具部門およびフライス加工部門には、複雑な部品の高精度で効率的な生産を可能にする高度なコンピュータ化された生産管理システムが導入されています。フライス加工と旋削加工のほかに、25tから 160tまでのさまざまなプレス機を備えており、金属プレス部品用の高精度順送金型を短いリードタイムで製造できます。

近年、Global-Thaixon社では、スプールとバルブシートのアプリケーションにおける工具の折損と工具の短寿命という問題を抱えていました。 そこで生産性、工具コストなど生産コスト改善を目指して、オーエスジーに技術サポートを依頼しました。

スプールアプリケーション

スプール – SCM415材の高圧ポンプ部品。各パーツには、深さ36mmの止り穴を1か所加工する必要があります。

スプールとはSCM415材の高圧ポンプ部品です。 現在試作段階のため、生産量は変動しますが、 この部品にはφ2深さ36 mmの止り穴が1か所あります。 穴径の許容差は±0.05mm、CNC旋盤にて加工されています。 Global-Thaixon社は当初、他社製のドリルを使用していました。 しかし、加工された穴は曲がりが大きく、真円度と同心度も不十分でした。 アプリケーションの詳細な評価の結果、オーエスジー タイの営業担当者であるTantip Luangthongsri氏は、ADO-MICROを推奨しました。

オーエスジー 小径油穴付き超硬ドリルADO-MICROは、Global-Thaixon社のSCM415材高圧ポンプ部品の加工に使用されています。

ADO-MICROは、オーエスジー初の小径油穴付き超硬ドリルで、小径深穴を安定かつ高能率に加工します。ドリルの外周部には微小スラッジが溜まりやすく、これが突発的な工具折損の原因の1つとしてあげられます。 したがって、小径深穴加工における切りくず排出性の向上は非常に重要なポイントとなります。本製品は、溝幅の拡張とマージン終了部を除去した独自の仕様で切りくず排出性の向上を実現しています。さらに、ダブルマージンがドリル自体の直進安定性をサポートし、穴内面のライフルマークを低減します。加えて、スムーズな切りくず排出を実現するために大きなクーラント吐出量を可能にする中空穴付きシャンクを採用しています。コーティングは、オーエスジー独自のIchAdaコーティングを施しており、優れた表面平滑性と高い耐摩耗性、耐熱性を兼ね備え、小径工具の長寿命化を実現します。 独自の工具形状とIchAdaコーティングにより、小径深穴加工でもノンステップ加工が可能となり、高い加工能率を実現します。

スプールのφ2深穴加工の工程は、最初にADO-MICRO 2D φ2 (EDP# 8732017) をパイロットドリルとして使用し、次にADO-MICRO 20D φ2 (EDP# 8732056) にて穴を完成させます。 ADO-MICRO 20Dの切削条件は、現状と同じ切削速度 28m/min(4,500 min-1)、送り速度 338mm/min(0.075 mm/rev)で使用されます。 Global-Thaixon社内のThaixon Pump(クーラント圧を増加させるための装置)は、切りくず排出を改善するために使用されます。 従来は、ステップを2回入れて加工をしていましたが、ADO-MICROに切り替えることでノンステップ加工が可能となり、加工時間は1ワークあたり約4秒短縮することができました。

バルブシート用途

バルブシート – EXEO-CR20(高強度・高耐食のマルテンサイト系ステンレス鋼)材の小型精密自動車部品。フラットドリルφ0.32を使用して、1つの部品に対して深さ 0.4 mmの止り穴を6か所加工しています。

バルブシートとはEXEO-CR20(高強度・高耐食のマルテンサイト系ステンレス鋼)材の小型精密自動車部品です。Global-Thaixon社はこの部品を約8年間製造しており、年間生産量は約160,800個です。フラットドリルφ0.32を使用して、1つの部品に対して深さ 0.4 mmの止り穴を6か所加工しています。 穴径の許容差は±0.015mmで、加工機はCNC旋盤を使用しています。従来、自社製のフラットドリルを使用していましたが、工具寿命が不安定で、穴の位置精度も安定しないという問題を抱えていました。

オーエスジー 超硬フラットドリルADFは、EXEO-CR20(高強度・高耐食のマルテンサイト系ステンレス鋼)製の小型精密自動車部品であるバルブシートの安定加工を可能にします。

オーエスジー タイの営業担当者であるTantip Luangthongsri氏は、切削条件を検討した後、特殊設計された超硬フラットドリルADF-2D φ0.32を推奨しました。ADFは、優れた汎用性、信頼性、および品質を実現する多様な用途に対応可能な超硬フラットドリルとして開発されました。従来、フラットな穴底面の加工にはエンドミルとドリルによる2工程が必要でした。薄板シャフト部品の加工では、ADFにより1ステップで加工が可能になり、加工時間の短縮と工具管理が簡素化されます。ADFはバランスの取れた先端形状により、加工精度が向上し、穴位置のずれが最小限に抑えられ、加えてシャープな刃先により切削抵抗が少なく、薄板でもバリの発生を小さく抑えることができます。そのうえ大きなチップルームにより、トラブルのない切りくず排出を実現します。さらに、オーエスジー独自のEgiAsコーティングを施すことで、優れた耐熱性と耐摩耗性で長寿命と寿命安定化を実現します。 ADFは、傾斜面、曲面、座ぐり、偏心穴、薄板など多様な用途に対応します。適用被削材は、炭素鋼、合金鋼、硬化鋼、鋳鉄、ステンレス鋼などです。

オーエスジー 超硬フラットドリルADFとバルブシート。

Global-Thaixon社製の切削条件は、切削速度20m/min(20,000min-1)、送り速度 100m/min(0.005mm/rev)でした。工具寿命は不安定で、1本当たりの工具寿命は約250~600個でした。ADF-2D φ0.32の切削条件は、従来品と同じ切削速度20m/min(20,000min-1)、送り速度100m/min(0.005mm/rev)です。自社製のドリルでは、加工精度が安定せず、 工具寿命もドリルの生産ロットによって異なり、工具の管理が大きな課題となっていました。 一方、ADF-2Dは安定性の高い加工が可能です。 工具寿命は平均約1,500個で、従来品の2倍以上の耐久性を実現しました。

Global-Thaixon社の生産エンジニアSaranphat Liangsakun氏が部品を検査します。

「オーエスジーのADO-MICROおよびADFドリルに切り替えた後、切削工具の交換に必要なダウンタイムの短縮、工具寿命の向上により加工コストを削減し、部品の品質と精度も大幅に向上したため、連続加工が可能になりました」 Global-Thaixon社プロダクション エンジニアSaranphat Liangsakun 氏は述べています。

Global-Thaixon社には400台近くの自動旋盤があり、オーエスジーより提案された小径工具に焦点を当てて、新しく開発された製品に対して積極的にテストしています。 最新の切削工具技術を活用することで、製造プロセスと製品の品質が向上し、最終的にクライアントにより大きな価値がもたらされます。

左から、Global-Thaixon社のプロダクション エンジニア Saranphat Liangsakun氏、エンジニアリング ディレクターKazushige Ishizawa氏、オーエスジー タイの営業担当者 Tantip Luangthongsri氏が、タイのチャチェンサオにある Global-Thaixon社の施設で。

「品質と顧客満足に尽力する企業として、オーエスジーとの継続的なパートナーシップを楽しみにしています」とGlobal-Thaixon社エンジニアリング ディレクターKazushige Ishizawa氏は述べています。

オーエスジー 小径油穴付き超硬ドリルADO-MICRO超硬フラットドリルADFの詳細


About Global-Thaixon

1990 年に設立された Global-Thaixon Precision Industry Co., Ltd. (Global-Thaixon) は、自動車、3C産業(Computer(コンピュータ)Communication(コミュニケーション)Consumer Electronics(コンシューマー・エレクトロニクス))、医療など世界中のさまざまな産業向けの精密部品を製造する大手メーカです。 Global-Thaixonの製造工場はタイのチャチェンサオにあり、生産床面積は約32,700m2、900人のスタッフが働いています。

Global-Thaixon社は、あらゆるフライス加工および旋削加工を400台近くのCNCの機械が24時間体制で対応します。 同社の工具部門およびフライス加工部門には、複雑な部品の高精度で効率的な生産を可能にする高度なコンピュータ化された生産管理システムが導入されています。フライス加工と旋削加工のほかに、25トンから 160トンまでのさまざまなプレス機を備えており、金属プレス部品用の高精度順送金型を短いリードタイムで製造できます。

Global-Thaixon社は、精密部品の製造に加えて、独自のThaixon Pumpを使用した高性能ポンプ ソリューションも提供しています。このポンプは、切削油の圧力を高めて切りくず排出性を改善し、切削工具の工具寿命を延ばします。

Thaixon Pump.

Global-Thaixon社の詳細