3 枚刃ドリルの性能

再研磨後でもメガマッスルドリルが高性能なことを実証

Vis Huang  |  OSG Shanghai

自動車製造業では、一般的に、エンジンブロック、シリンダーヘッド、クランクシャフトなどの部品を、鋳鉄、合金鋼、アルミニウムなどの材料から作ります。ビジネスでは大量生産が行われるため、多くの場合、工具を選択する際、信頼性と費用効率が重要な決定要因となります。

この事例では、硬度180 ~ 220 のHT250(FC250 と同等)で作られたシリンダーブロックをテストしました。お客様は、中国鄭州にある大手自動車メーカーで、年間400,000 台の生産能力を保有しています。シリンダーブロックの材料は引っ張り強度が低い脆性ですが、成型は容易です。全ロットが380 ブロックで構成され、それぞれに15 個のドリル穴が必要です。部品は、BT50 ドリルホルダを搭載したマキノ横型マシニングセンタにおいて、内部及び外部から8% の乳液タイプの切削油剤を供給しながら加工します。使用したドリルは費用効率を最大化するため、再研磨して利用します。このメーカーは、以前は2 枚刃オイルホール付き超硬ドリルを使用して、切削速度100 m/min、回転数4,680 min-1、一回転あたりの送り量0.15 mm/rev、送り量1,700 mm/minで運転し、14 mmの穴深さに(止まり穴)穴加工していました。同社は、さらに効率化することを目指して、2 枚刃から3枚刃の工具に切替えることを決めました。

硬度180 ~ 220 のHT250(FC250 と同等)で作ったシリンダーブロック

従来の3 枚刃ドリルは、通常、鋳鉄や鋳造アルミニウムなどの材料で、切りくずを短くしながら加工するときに使用します。3 枚刃ドリルは、2 枚刃ドリルより溝(切りくずポケット)が小さいので、鋼のように加工の難しい材料にはあまり使用しません。オーエスジーのTRS「メガマッスル」ドリルは、加工効率が極めて高い3 枚刃シリーズとして宣伝しています。メガマッスルドリルは、鋼の切りくずを細かく分断し排出しやすくする特殊な形状の溝を持つ設計となっています。これにより、送り量を2 枚刃ドリルより最大1.5 ~ 2 倍速くすることができます。さらに回転速度を減らすことができるので、ドリルの摩耗量を減らして工具を長寿命化できることも重要です。刃先をネガティブにしたことで、貫通孔の破損による角の欠けを最小限度に抑えることができます。さらにその独自の形状により、加工硬化を抑えて穴の精度を高めることができ、次工程で使用するタップなどの工具の寿命を延ばします。

3 枚刃ドリルは、2 枚刃ドリルより溝(切りくずポケット)が小さいので、鋼のように加工の難しい材料にはあまり使用しません。しかし、オーエスジーのメガマッスルドリルは、鋼の切りくずを細かく分断し排出しやすくする特殊な形状の溝(PAT.P.)を持つ設計となっていますので、鋼の加工でも理想的な性能を実現できます。

メガマッスルドリル(直径6.8 mm のTRS-HO-5D)の一つを試験用のスピンドルに取り付けた後、メーカーの方にこのドリルの実際の性能を見ていただきました。再研磨前、切削速度100 m/min、回転数4,680 min-1、一回転あたりの送り量0.25 mm/rev、送り量1,170 mm/min で稼働した場合、以前の2 枚刃ドリルで加工できる穴は4,800 個でしたが、メガマッスルドリルでは、合計で5,600 個の穴(材料の約109 m)を加工できました。工具を再研磨後は、以前の2 枚刃ドリルで加工できた穴は2,500 個でしたが、メガマッスルドリルは2,800 個の穴を加工できました。テストの結果、性能が安定しているメガマッスルドリルの方が優れていることがわかりました。マージンを均等に120°間隔で設けた3 枚刃では、振動を起こさず想定通りに穴加工しやすいため、穴の品質と公差を改善できます。2 枚刃ドリルの場合、穴径や品質が急激に変化することが多いのに対し、3 枚刃ドリルでは工具寿命が尽きるまで、変わることなく安定しています。この3 枚刃のメガマッスルドリルでは、2 枚刃ドリルの2 倍精密な穴精度を達成できます。メガマッスルドリルは、CGI エンジンブロックから鍛鋼クランク軸まで、自動車部品の製造や関連分野で高効率な穴加工ソリューションを提供できます。