ADO-MICRO 小径油穴付き超硬ドリル

小径の深穴加工で安定した高能率を実現

天野裕之、オーエスジー株式会社 ドリル開発エンジニア

オーエスジーでは初となる小径の深穴加工において安定した高能率加工を実現する、小径油穴付き超硬ドリルADO-MICROをリリースしました。

ADO-MICROは加工深さ2D・5D用はφ0.7~φ2、12D・20D・30D用はφ1~φ2のラインナップを揃えています(D:直径)。「小径」と聞いてイメージするサイズ感は、機械加工に従事するユーザの中でも異なることでしょう。品名に使用している「MICRO」は非常に小さな長さの単位に使われている「μ」を連想させるかもしれませんが、単位とは関係なく“小さい”ことをイメージして名付けました。

“小さい”直径のドリルであれば、外部給油式の超硬ソリッドドリルやハイスドリル等が選択可能です。しかし、今日の機械加工におけるニーズは、より安定・高能率・長寿命を実現可能な工具を求めています。これは小径深穴加工も例外ではなく、内部給油式のドリルへのニーズが高まってきています。

溝形状

小径の深穴加工を上手に行うポイントの一つとしてスムースな切りくずの排出が挙げられます。図1に示すように、ドリルの先端部で生成された切りくずは矢印の方向に向かって流れていきます。しかし、溝部のスペースに余裕が無いと、切りくずはスムースに流れることが出来ず、加工穴精度の悪化やドリル折損の確率を高めてしまいます。そこで図1の矢印の先に示すように、ドリル先端部よりも広い溝を設けました。この溝拡張部により、スムースに切りくずを排出させ、安定加工を実現しています。

図1.溝拡張部

また、ADO-MICROは図2に示すように全てのサイズで独自のダブルマージンを採用しています。ダブルマージンによりドリルの直進性を高めることで、特に深穴加工の安定化を実現しています。加えて、刃部全体の剛性を確保するため、マージン部は必要最小限の長さに設定されています。しかし、この2つのマージン間の浅い溝部には、微小スラッジが溜まりやすく、突発折損の原因となる可能性があります。そこで図3に示すような出口を設けることで全体のバランスをとっています。

図2.ダブルマージンによる4点支持

図3.マージン終端に設けられた出口

油穴

ADO-MICROは図4に示すように、螺旋状に2本配置された油穴に加え、クーラントが注入されるシャンク側に真っ直ぐな1本の中空穴を設けています。この中空穴の効果は工具先端から吐出されるクーラント吐出量を増加させることです。中空穴が無い場合は、クーラントがシャンク端面にある細い油穴に注入されるため、クーラント吐出量を増加させるためには高い圧力を必要とします。しかし、中空穴を設けることで圧力損失が低減され、クーラント吐出量を増加させることが可能となります。クーラント吐出量が増加することで切りくず排出を促進させ、安定加工をサポートします。

図4.シャンク構造とクーラント吐出量

最新のコーティング技術 IchAda(イチャーダ)コーティング

小径の深穴加工における安定加工を実現するためのもう一つの重要なポイントはコーティングです。

工具コーティングの役割は、主に工具寿命を延ばすために耐摩耗性、耐熱性や潤滑性を向上させることです。そして、小径工具においては、特に潤滑性が重要な要素となります。図5に示すように、従来技術のコーティング被膜表面は滑らかではなく、切りくず排出を妨げる可能性があります。今回採用されたIchAdaコーティングは平滑性に優れ、かつ耐摩耗性・耐熱性が高く、高い密着性を実現することで工具の長寿命化を可能にしました。

図5.被膜表面

加工データ

図6はSCM440加工時のADO-MICROと他社品の工具寿命の比較を示しています。他社品は加工初期で切れ刃の欠損や工具折損が発生しています。ADO-MICROは細かな切りくず形状とスムースな切りくず排出により、安定した長寿命を実現しています。

図6.SCM440耐久試験データ

ADO-MICROは難削材であるチタン合金においても安定した加工を実現します。図7に示すように、他社品は切りくずを排出させるため、ステップ加工を必要としています。ADO-MICROはスムースな切りくず排出が可能なため、ノンステップ加工が可能です。さらに他社品と比べて約5倍の送り速度で加工可能なため、大幅な加工時間の短縮ができ、高能率な加工を実現しています。工具寿命においても、他社品に対して約2倍の穴数を加工した段階でさらに加工が継続可能な状態を維持しています。

図7.チタン合金加工能率向上事例

最後に

ADO-MICROは独自の溝形状と最新のIchAdaコーティングにより、深穴のノンステップ加工が可能となり、高い加工能率を実現しています。小径の深穴加工に特有な課題に焦点を当て、安定加工を追及したADO-MICROは、ステンレス鋼を始め幅広い被削材に対応しています。また、標準サイズに加えて、加工ニーズにあわせた様々なサイズの特殊品を提供しています。

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