アディティブ・マニュファクチャリング用エンドミル
鈴木健夫、瀧川郁士、中西功、オーエスジー エンドミル開発エンジニア
近年、製造業の展示会では日本・海外の多くの機械メーカ各社が金属積層可能な設備の展示をしています。製造業の分野では当初、主に試作用ソリューションとして使われていた技術ですが、進むデジタル化と政府の戦略により、メーカ各社は高度なソリューションの開発を加速させています。
アディティブ・マニュファクチャリングとは
従来のモノづくりは金属の塊から削り出す事で製品を作り出していたのに対し、ベースとなる金属に金属粉を積層する事で製品を作り出す手法で、この方式をアディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing)と言います。
アディティブ・マニュファクチャリングの目的は製品の短納期化、低コスト化、材料の無駄を省く製造方法として考えられ、3Dデータの活用や3Dプリンタを使った造形方法が発達したことが背景にあります。
アディティブ・マニュファクチャリングで使用する材質の種類
アディティブ・マニュファクチャリングは積層する材質で金属タイプ(Metal type)と樹脂タイプ(Resin type)に分類できます。(表1)
表1 アディティブ・マニュファクチャリングの種類と積層方法

金属タイプは積層方式により2種類に分類され、指向性エネルギー堆積(Directed energy deposition以下DED)と粉末床溶融結合(Powder bed fusion以下PBF)に分けられます。
さらに、「積層のみ可能」な機械と「積層から熱処理、コーティング、切削加工」まで行うことが可能なハイブリッドマシンの2種類に分けられ、日本の大手機械メーカーではハイブリッドマシンの製造販売を開始しています。
当社ではこのハイブリッドマシン特にDED方式向けに、アディティブ・マニュファクチャリング用エンドミルの開発をしました。
表2 積層方式ごとの切削工具要件と長所・短所

DED方式は表2にあるように、沢山の長所があるもののPBFと比べると積層精度が劣るという大きな短所があります。
この短所は二次加工への影響が大きく、製品へ仕上げて行く過程の中で切削加工に大きな影響を及ぼす事が分かってきました。
写真1はDED方式によるSKD11材(60HRC)積層後の写真です。
写真からも分かるように積層後に1mm以上の段差が確認でき、切削加工では1mmを超える取り代ムラの変化は工具寿命に大きな影響を及ぼし寿命低下の大きな要因となります。
写真1 DED法で堆積されたSKD11(60HRC)の写真

その為あらかじめ取り代ムラの影響を受けることが予想される場合、切込み量がネライの切込み深さに安定するまではエアカットを含んだ加工パスを設定する事で工具の欠け、折損を防ぐのが一般的ですが、本来このアディティブ・マニュファクチャリング技術の活用は短納期化、低コスト、材料の無駄を省く事が目的であり、エアカットによる加工時間の増加は意に反する事になります。
そこで、当社ではアディティブ・マニュファクチャリングによる高硬度な被削材に対し、能率良く長寿命、深切込み対応可能な工具、超硬ボールエンドミルAM-EBT(R3~R10の6アイテム)と超硬ラジアスエンドミルAM-CRE(φ6~φ20の6アイテム)の開発をしました。(写真2)
写真2 ボールエンドミルAM-EBT:R6 とラジアスエンドミルAM-CRE φ12XR2
アディティブ・マニュファクチャリングにおけるオーエスジー製エンドミルの特長と利点
このアディティブ・マニュファクチャリング用工具は深切込みにも耐えうる強靭な3次元ネガ形状が特徴で、コーティングには最新のDUROREYコーティング(表3)を採用。従来の高硬度鋼用コーティングに対し高い耐熱性と耐摩耗性、優れたじん性を兼ね備えたコーティングで、取り代変化の大きな加工に対しても長寿命化を実現しています。
表3 DUROREYコーティングの性質

アディティブ・マニュファクチャリング後の二次加工は金型肉盛り修正にも類似する点が多く、金型加工(修理・修正)の現場では実際にエアカットを繰り返し、時間をかけて加工しているのを何回も見てきました。しかし、オーエスジーのアディティブ・マニュファクチャリング用エンドミルを使用頂く事で、高能率、長寿命な加工が期待でき、実際にテスト使用頂いたお客様からも良い評価を得ています。
アディティブ・マニュファクチャリング用機械の販売台数は確実に伸びており、それに伴う二次加工も増える事が予想されます。アディティブ・マニュファクチャリングに関連する切削加工や金型肉盛り加工など切削業界の生産性向上と業界の発展に引き続き貢献していきます。
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