超精密加工

オーエスジーのエンドミルが燃料電池用金型プレートの生産で高品質、高精度の加工を実現

Peter Cramer Jensen  |  OSG Scandinavia

近年、燃料電池を電源とするシステムが、効率が良く信頼性の高い代替発電技術として登場し、世界中でさまざまな産業に応用されています。急速な普及の原動力となっている要因には、高まる環境への懸念に加えて、水素燃料電池のインフラ整備に対する政府の取り組みが活発化していることなどがあります。

Denmark Odense のHjerno Tool Factory 社は近頃、燃料電池に使用する59 HRC 合金工具鋼製金型プレートの加工を伴う注文を受注しました。1946 年に創立され、Scandinavia で最も大きく歴史のある工具メーカの一つであるHjerno Tool Factory 社は、品質と細部への気配りを最も重視した射出成形用工具の生産を専門としています。最新の機械や装置を使用して、Hjerno Tool Factory 社は2 ミクロンという小さい許容差で複雑な部品のための革新的な工具のソリューションを提供しています。4,000 平方メートルの近代的な製造施設には50 人を超える工具の専門家が常駐し、平均で1 日に1 個の新しい射出成形用工具を生み出すことができます。

1946 年に創立され、Scandinavia で最も大きく歴史のある工具製作所の一つであるHjerno Tool Factory 社は、品質と細部への気配りを最も重視した射出成形用工具の生産を専門としています。写真提供: Hjerno Tool Factory 社。

Hjerno Tool Factory 社が受けている注文のほとんどは、複雑で、難削材を伴い、厳しい許容差とコスト効率を最大化するための短いサイクルタイムが求められるものです。Hjerno Tool Factory 社が国外の顧客から近頃受注した燃料電池のプロジェクトも、そのような注文の一つでした。

最新の機械や装置を使用して、Hjerno Tool Factory 社は2 ミクロンという小さい許容差で複雑な部品のための革新的な工具のソリューションを提供しています。写真提供: Hjerno Tool Factory社。

燃料電池について

燃料電池は、触媒でコーティングされた薄膜に水素ガスを通して空気中の酸素と結合させることで電力を発生させる電気化学式電池です。この電気化学反応は水蒸気に加えて電子の流れを発生させ、バッテリー式の電気自動車で使われているものと同じ電気モーターを動かすことができます。ガス発電機やリチウムイオン電池と比べると高価ではありますが、燃料電池は水素と酸素が供給されているかぎり継続して電気を生み出すことができます。しかも、燃料電池から排出されるのは水と熱だけであるため、多くの人が燃料電池技術を新しい持続可能な低炭素エネルギー源であると考えています。

燃料電池用金型プレートの加工

燃料電池は、その動作に必要な多くの部品で構成されています。中でもプロトン交換膜(PEM)のプレートは、水素と酸素を電気と熱に変換する化学反応が行われるエネルギー発生部として機能するため、特に重要です。この薄い鋼のフロープレートには、水素ガスと酸素ガスが通過するための複雑な流路パターンが形成されています。

Hjerno Tool Factory 社が極めて厳しい許容差要件の下で59 HRC 合金工具鋼から燃料電池パワースタックのセパレータプレート膜用の8 枚の金型を加工するには、数ヶ月間にわたる休みなしの精密加工が必要でした。プロジェクトでは数ヶ月間にわたる絶え間ない0.4 mm のボールエンドミルと、8 日間にわたる休みなしの仕上げミーリングが行われ、許容差は3 ミクロン以内でした。

Hjerno Tool Factory 社が極めて厳しい許容差要件の下で59 HRC合金工具鋼から燃料電池パワースタックのセパレータプレート膜用の8 枚の金型を加工するには、数ヶ月間にわたる休みなしの精密加工が必要でした。各プレートに必要な生産時間は、複雑さに応じて2 ~ 4 週間です。

これらのことからこのプロジェクトは他に例を見ないものだったと語るのは、Hjerno 社に切削工具を提供したOSG Scandinavia の常務取締役Peter Jørgensen です。

「OSG Scandinavia の40 年の歴史の中でも、このようなプロジェクトに携わったのは初めてのことでした」とJørgensen は言います。「使用機械、使用工具固定治具、使用工具本体から課される要件は、どれも不可能と紙一重のものでした。」

この困難に取り組むため、Hjerno Tool Factory 社は日本の工作機械メーカ、マキノの加工機V33i を採用しました。シュリンクフィット式工具ホルダはMST社のものが使用され、オーエスジーからは2 つの異なる切削工具、ロングネックボールエンド形超硬エンドミルWXS-LN-EBD とCBN ボールエンドミルCBN-SXB を提供しました。

WXS-LN-EBD は2 枚刃、ロングネックのボールエンド形超硬エンドミルで、65 HRC 以下の焼入れ鋼の高精度加工用に設計されています。オーエスジーオリジナルのWXS コーティングを施すことで優れた耐熱性と耐摩耗性を備えたこのリブ加工用エンドミルシリーズは、過酷な加工条件の下でも高精度と高能率を両立した性能を実現することができます。

WXS-LN-EBDは2 枚刃、ロングネックのボールエンド形超硬エンドミルで、65 HRC までの焼入
れ鋼の高精度加工用に設計されています。硬い金属、複雑な細部、滑らかな仕上げなどを伴う加工用途に非常に効果的です。

CBN-SXB は小径2 枚刃のボールエンド形ミルで、高精度仕上げ用に設計されています。そのスパイラルギャッシュエンドカット形状は刃先強度と切れ味を両立させ、超硬工具並みの切削性能を実現します。CBN-SXB は、輪郭加工や傾斜の大きいワークの加工で特に効果的です。また、50 HRCを超える高硬度材で、仕上げ面が広いワークに最も適しています。

CBN-SXBは小径2 枚刃のボールエンド形ミルで、高精度仕上げ用に設計されています。そのスパイラルギャッシュエンドカット形状は刃先強度と切れ味を両立させ、超硬工具並みの切削性能を実現します。

「当初は、このプロジェクトのためにカスタマイズされた切削工具を開発するという話もありましたが、標準の切削工具でも作業は可能であることがすぐに分かりました」とJørgensen は言います。

オーエスジーのエンドミルは、高い送り速度の条件下でも燃料電池プロジェクトで求められる厳しい精度を維持しながら高品質の加工面を形成することに成功しました。しかし、加工が進むにつれて、機械の加工にHjerno Tool Factory社の技術者も理由を説明できないばらつきがあることが明らかになってきました。

かなり長い間、ばらつきの原因は機械または切削工具の機械的な問題であると考えられていました。しかし、後になって、Hjerno Tool Factory 社が使用している高度なCAM システムに誤差があることが発見されたのです。

Denmark での専門家会議

ばらつきの問題を解決するため、Hjerno Tool Factory 社は世界中から支援を求めました。程なく、プロジェクトのさまざまな関係者(Hjerno Tool Factory 社、オーエスジー、マキノ、CAD/CAM のサプライヤー) が、Denmark の町Odense にあるHjerno Tool Factory 社の本社に集まりました。

システム開発者は結局14 日間Denmark に滞在し、CADソフトウェアが極めて大きいファイルを扱えるようにするためにプログラム構造全体を書き換えました。それと並行して、オーエスジーとマキノの専門家は加工を最適化するための新しい案を考えました。

チームの努力は結果的に大成功を収めました。それ以降、Hjerno Tool Factory 社の機械は必要な許容差の範囲内にとどまるようになり、燃料電池の金型プレートを非常に高い品質で完成させることに成功したのです。顧客であるSweden の燃料電池メーカーは最終結果に非常に満足し、後になってこのDenmark の製作所に別の長期の注文を発注したほどでした。

この燃料電池プロジェクトがもたらした重要な教訓は、加工機にいつでも責任があるわけではないということです。

「加工機に責任を押し付けることはいつでも非常に簡単です。病気の症状が表れる場所はそこだからです」とHjerno Tool Factory 社の工具製作者Kristian Jessen Hansen 氏は言います。「このプロジェクトは、当社の加工機の最適な使用方法についてはるかに深い理解を与えてくれただけでなく、CAD/CAD システムが本来備えている弱点に気付くためにも非常に役立ちました。」

OSG Scandinavia にとってこの燃料電池のプロジェクトは、許容差と能力が問われるような状況において、サプライヤーと顧客の緊密な関係が極めて重要であることを示してくれました。

「Hjerno Tool Factory 社とは過去15 年間にわたって一緒に仕事をさせていただいていますが、パートナーのノウハウや専門知識を本当に認識するきっかけになるのはこのようなプロジェクトのときです」とJørgensen は言います。

Hjerno Tool Factory 社は、精度、専門的技術、妥協しない品質を誇りとしています。先進的な考えを持つ同社では、顧客に最高の成果を提供するために、新しい生産施設や工具ソリューションに継続的な投資を行っています。

Hjerno Tool Factory 社の常務取締役Aage Agergaard 氏。写真提供: Hjerno Tool Factory 社。

「技術的に困難なプロジェクトのすばらしい点は、会社のレベルを引き上げることができることです」とHjerno Tool Factory 社の常務取締役Aage Agergaard 氏は言います。

「成功するために必要なのは、根気と粘り強さだけです。」