次世代のAE-VMS 超硬防振型エンドミル
瀧川郁士、オーエスジー株式会社、アプリケーションエンジニア(エンドミル開発部門)
AE-VMS 超硬防振型エンドミルがオーエスジーのミリング工具製品群に仲間入りを果たしました。これは次世代のエンドミルシリーズで、さまざまなフライス加工用途で優れた仕上りを実現しつつ、フライス加工効率の新境地を開くものです。
オーエスジーではこれまでも、特定の用途のニーズに基づいてエンドミルを開発して来ました。機械加工の要件は時の経過とともに進化していますが、それに応じて多用途のフライス加工ソリューションの重要性が高まっています。この結果、フライス加工ソリューションの新しい基準を確立する目的で、AE-VMS の開発プロジェクトが導入されました。
加工の効率性を高めることが、AE-VMS の開発プロジェクトの主要な目的の一つでした。これが実現すれば、機械加工にかかる時間が削減され、様々な面でコストの節約につながります。さらに、高品質の表面仕上げにも焦点が当てられました。

オーエスジーは数年にわたり膨大な量のデータを蓄積し、既存の製品と市場に出回る競合製品の性能を詳細に比較分析しました。このデータと顧客からのフィードバックが、AE-VMS シリーズなどの革新的製品を誕生させる原動力となったのです。
試行錯誤の賜物として誕生した革新的な製品
開発のプロセスで最も困難を伴ったのが、製品に独創性を加えることでした。市場にはすでに、高い効率性を誇るエンドミルが数多く出回っています。新たに誕生するエンドミルに、既存の競合製品にはない特性を持たせるのは本当に大変な作業でした。結果的に、AE-VMS の開発で焦点が当てられたのが、金属加工の際に発生するバリの問題でした。従来のエンドミルの多くはこの問題を解消していなかったため、オーエスジーの開発チームは長い時間をかけてこの問題を解消する新しい方法を模索しました。
オーエスジー株式会社、エンドミル開発チームのエンジニアである瀧川郁士は、AE-VMS 超硬防振型エンドミルの開発を担当しています。
新たな課題に立ち向かうには、失敗の連続を覚悟しなければなりません。オーエスジーの開発チームは、一つ一つの失敗の原因を見つけ出し、対策を講じ、段階的に問題の解決にこぎ着けました。こうした作業を辛抱強く繰り返すのが、製品技術者たちの役目です。成功を得るために、誠実かつひたむきな気持ちを持って課題に対処していかなければなりません。
びびりとバリの発生を低減
図1 に示すように、AE-VMS が持つ鋭利なポジ刃形が、切削の際の力を大きく低減するため、たとえ厳しい切削条件でも工具の摩耗とワークへの影響が最小限に抑えられます。切削加工におけるびびりは、AE-VMS が持つ不等リード、不等分割により最小限に抑えられます(図2 参照)。さらに、その独自の溝形状によってトラブルなく切りくずを取り除くことができ、安定した性能を発揮することが可能となっています。図3 に示すように、突出し長さがL/D=4 であるときでも、AE-VMS は安定的な性能を発揮することができます。AE-VMS が誇る高い剛性によりバリの発生が抑えられ、高精度のフライス加工を行えます。



オーエスジー独自のDUARISE コーティングを採用し、その優れた潤滑性、対摩耗性、高温耐酸化性で工具の長寿命化を実現しています。図4 に示すように、AE-VMS は切削加工による熱の発生を一貫して抑えることができるため、他の競合製品と比較して表面粗さが安定し、工具の摩耗も低く抑え、長寿命化を実現しています。これらに加え、DUARISE コーティングの複合多層構造がサーマルクラックを最小限に抑えるため、AE-VMS は水溶性オイルでも卓越した性能を発揮します。

AE-VMS は、ステンレス鋼、鋳鉄、炭素鋼、合金鋼、およびHRC40 までの焼き入れ鋼でスロット加工、側フライス加工、ヘリカルフライス加工、輪郭フライス加工、ランプ加工など、幅広いフライス加工を作業できるように設計されています。図5 に示す切削試験では、ステンレス鋼でもびびりを生じさせず、バリの発生を最小限に抑えた優れた表面仕上げを実現するAE-VMS の高い性能が実証されています。

繰り返し試験を実施することで、機械加工をすることが困難な素材でも、優れた性能を発揮し、一貫した品質を実現するAE-VMS は、フライス加工の新たなスタンダードを打ち立てる製品です。
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