生産性向上への近道

3 溝のPHX ブルノーズエンドミルが、仕上げ工程を必要とせずに優れた表面クオリティを実現

Magnus Hoyer  |  OSG Germany

最新の機械を採用すれば、高い品質や効率性を容易に実現できることは確かです。しかし、すべての企業が投資を行えるわけではなく、またさまざまな制約があり投資できる機械の台数も限られたりします。IKO Isidor Kurz Werkzeug- und Formenbau(Tool & Mold Making)社は、グラファイトの複合工作機械を使用して、数年間にわたり58 HRC の被削材を成形加工する発注を受けました。このとき同社は、工程を改良する目的でオーエスジーのPHX-LN-DBT を採用することに決めました。これは、他の高性能の複合工作機械と同程度の成果を達成するものでした。

IKO Isidor Kurz Tool & Mold MakingGmbH & Co. KG は、1946 年にIsidor Kurz が創業したKurz グループの傘下企業です。ドイツ、Haigerloch のOwingen 地区を拠点にするこの企業は、自動車、電子、医療、および消費財の業界に向けてカスタマイズしたコンポーネントを製造、組立てを行っています。工具と金型の製作を担当する部門に加え、Kurz グループには、高度なプラスチック製コンポーネントの製造を専門とするKurz Kunststoffe GmbH とKurz Plast Kft. という会社も傘下にあります。その工具とモールドの製作部門が現在擁している従業員の数は、20 人余に過ぎません。少人数ですが、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making は自社の製品に誇りを持ち、高い品質水準を維持しています。この会社は継続的に新技術への投資を行っており、製造業で生じるニーズの変化に対応した取り組みを行っています。

IKO Isidor Kurz Tool & Mold Makingは、非鉄材、軟鋼材、および50 HRCまでの焼き入れ鋼に対応したWXS エンドミル製品群のワークショップに参加したことで、オーエスジーのミリング工具に信頼を寄せています。このワークショップで、オーエスジーは焼き入れしたコンポーネントを立形マシニングセンタで加工するデモを行い、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making の経営陣が大きな関心を持ちました。

立形マシニングセンタは、速度、精度、および柔軟性の面で優れたバランスを発揮できますが、その性能は特に深いキャビティ・モールドや背の高いコア・モールドでは、5 軸マシニングセンタを下回ります。これを補うため、立形マシニングセンタはしばしば、送り速度を低下させて異音の発生を抑え、工具の破損を防止しなければなりません。焼き入れ材の表面仕上げで期待する品質を達成するのにも、大きな試練が立ちはだかります。

以前、オーエスジーのWXS エンドミルにより、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making の工具は寿命を4 倍にも伸ばすことができました。こうした大きな成功により、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making は、自社の工具の流通業者とオーエスジーに、コンポーネントを力で変形させる必要がある熱硬化性樹脂で作られた58 HRC のモールドを、機械加工する最新のプロジェクトについて相談を持ち掛けることを決めたのです。材料の性質上、仕上げの後に多くの時間とコストがかかる方法でモールドを研磨しなければなりません。当時、コンポーネント1 つを4 週間にわたり研磨工程を実施するのに、€ 3,000ほどの費用がかかりました。こうして、Aldingen を拠点にする工具の流通業者であるErich Klingseisen KG の営業社員、Klaus Winter はこの費用を低減せよとの指示を受けたのでした。

「より具体的に言えば、輪郭全体の研磨作業を削減できるように、表面のRa値を達成することが目的でした」と、ヴィンターは語ります。「この要求は理解できるものでした。なぜなら、6 個すべてのモールドの研磨費用が€ 18,000 にも上っていたからです。」

用途について入念な評価を行うことで、オーエスジーの営業・技術部門は、PHX-LN-DBT 3 溝のネックが長いブルノーズエンドミルを提案しました。PHX-LN-DBT はネックが長いブルノーズエンドミル製品で、表面のクオリティを高めながら荒加工に必要な時間を大幅に短縮することができるように設計されています。高い剛性を誇り、0.75D の短い切削形状により、機械加工の際の抵抗が低く抑えられます。バックテーパーを持たないPHX-LN-DBT の周囲の刃先はフラットなフライス加工を可能にし、垂直壁フライス加工の精度を向上させます。さらに、PHX-LN-DBT の強ねじれ角により、工具の振れがとても低く抑えられ、厳しい許容差を守ることができます。機械加工の環境によって、PHX-LN-DBT を使用することで、中荒工程や中仕上げの工程が全く不要になり、ユーザが最終的な損益を大きく向上させることに貢献できます。

PHX-LN-DBT はネックが長いブルノーズエンドミルで、表面のクオリティを高めながら荒加工に必要な時間を大幅に短縮できるように設計されています。

IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making は、2 溝カッターを荒工程に採用してモールド加工に乗り出しました。そして、直径2 mm のPHX-LN-DBT を使用して、鏡面の製作を行いました。実際に作業にかかった時間は、仕上げのための6 時間を含め、合計22 時間でした。PHX-LN-DBT は18 時間にわたり使用されましたが、同等エンドミルと比較すれば並外れていました。

「18 時間経過した時点で工具を交換しましが、これはさらに時間がかかる可能性があることを考慮した安全策です」と、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making の現場管理者、Gerd Kleinmann は語ります。「私たちは、Rz 1.3μm、あるいはRa 0.16μm を達成することに成功しました。私たちの目標に到達したのです。PHX-LN-DBT の3 溝の刃先で、相当な時間も節約できました。」

その独自の3 溝形状により、PHX-LN-DBT は仕上げ工具としての役割を果たします。さらに、PHX-LN-DBT の強ねじれ角により、工具の振れがとても低く抑えられ、厳しい許容差を守ることができます。

直径が1mm 未満の3 溝エンドミルは、市場ではほとんど出回っていません。その独自の3 溝形状により、PHX-LN-DBT は仕上げ工具としての役割を果たします。エンドミルは、より高品質の表面と信頼性の高い処理を実現するだけでなく、2 溝エンドミルと比べて同じ切削速度や1 歯ごとの供給量を達成することも可能です。その一方で、30% 高い送り速度も達成することができるのです。

熱硬化性樹脂で作られた58 HRC の金型。首部が長いブルノーズエンドミル、PHX-LN-DBT を採用することで、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making 社は、求められる品質と時間の条件に従い、グラファイトの複合工作機械を使用したプロジェクトを完了させることに成功しています。

従来の考えでは、50 HRC のモールド部品を立形マシニングセンタで加工することは、最適な方法ではありません。しかし、IKO Isidor Kurz Tool & Mold Making の状況では、それは不可避でした。それでも、切削工具を変更することで、作業の負荷は軽減されました。最適な複合工作機械を使用すればとても良好な結果が得られるという一般的な主張とは対照的に、PHX-LN-DBTなら、ある程度の弱みは容易かつ迅速に補うことができることを実証しています。