複合材翼の加工

BNC ルーターが層間剥離と未切断繊維をなくす

Hakan Erdogan  |  OSG Turkey

航空機の機体は、例えばエンジン、胴体、翼、テール、着陸装置など数多くの部品を組み立てて作られています。こうした部品の多くはチタン、アルミニウム合金、複合材で作られています。近年、燃料効率を高め、運転費を削減するため、航空機の製造業者は、軽量で耐久性が高く腐食しない材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を航空機の設計に積極的に利用しています。

エアバスA350 の場合、胴体と翼はいずれも、主にCFRP で作られています。エアバス社によると、A350 の機体は、およそ70 パーセントが複合材構造とチタンとアルミニウム合金で作られています。複合材だけで53 パーセントを占めます。

CFRP 翼パネルの製造工程には通常、成型、テープ積層、縦通材組み込み、真空圧着、硬化、非破壊検査、機械加工、組み立て、塗装などの工程が含まれます。切削工具は、製造工程の終盤に向けて重要な役割を果たします。危険な状況でも安全性を保つため、精度と品質が極めて重要です。

トルコのアンカラに位置するTUSAS-トルコ航空宇宙産業(TAI 社)は2012年から、補助翼の背骨とも呼ばれるA350 補助翼スパーを製造しています。TAI 社はトルコ国内の宇宙システムの設計、開発、製造、統合を専門としています。アンカラの製造工場の広さは、およそ500 平方メートルで、産業設備が23 万平方メートルを占めています。この工場は、部品の製造、航空機の組み立て、飛行試験、軍事・民間航空機市場への発送が可能な最先端のハイテクマシンを複数配備しています。

Z スパーは高性能5 軸FOG 精密フライス盤で加工します。TAI 社のNC エンジニアリングリーダーのオヌル・バティヤル氏が、複合材翼スパーの製造を指揮しています。

TAI 社が製造する複合材翼スパーの大きさは、長さ5.5 m、幅0.5 m です。4 つのZ 型スパーが、1 セットの補助翼を構成しています。1 年で合計64 セットの補助翼を製造しています。部品のすべての縁周りに要求される輪郭度公差は、+/-0.5 mm です。Z 型スパーは、高性能5 軸FOG 精密フライス盤で加工します。

Z スパーは高性能5 軸FOG 精密フライス盤で加工します。

TAI 社では、製造工程全体を通して刃先の層間剥離や未切断繊維が発生していましたが、それらは許されないものでした。層間剥離は、複合材が層に分かれることを指し、フライス加工中に穴の一端または穴の両開口に発生します。荒加工作業に、ダイヤコートした直径12.7 mm の圧縮ルーターを使用していましたが、工具寿命は満足できないものでした。

OSG Turkey が開催した加工・トレーニング説明会に参加した後、TAI 社は、他社のルーターと比較しながらオーエスジー製ルーター(DIA-BNC)の性能を確認しました。

DIA-BNC は、高送りのCFRP 荒加工と仕上げで優れた性能を発揮するように設計された特許技術のダイヤコート微細ニックルーターであり、厚い複合材と薄い複合材のどちらにも使用できます。非常に小さな切削抵抗と溝形状の管理により、工具寿命を大幅に延ばすことができます。

TAI社が2008年から製造しているZ オーエスジーDIA-BNCルーターの端面型スパー。

TAI 社のNC エンジニアリングリーダーであるオヌル・バティヤル氏は次のように語ります。「オーエスジーニックルーターはすべての特長を備えて万能なので、非常に素晴らしい。」「フライス加工と溝加工の能力に加えて、溝長に沿った刃先が複数ある点が、他と違います。オーエスジーのダイヤコートも、私が知る限り最高のものです。」

DIA-BNC を、フラッドクーラントと焼ばめホルダ(短型と長型)を使用して、S 6,000 rpm、Vf 1,250 mpm という同じ溝加工の切削条件で稼働させると、以前とは違い、機械加工後も層間剥離や未切断繊維が発生しません。

バティヤル氏は次のように語ります。「オーエスジー製ニックルーターに替えたことで、表面品質を高めることができました。」「層間剥離がなくなったことで、当社は1 年で17,920 ユーロのコストを削減できました。」