1 本のタップですべてに対応

多くの材料で高い信頼性

Dieter Prinz  |  OSG Germany

特に切削工具の場合、多機能であることが必ずしも高性能であるとは限りません。タップの場合、通常、工具形状と基材は、加工対象の材料に合わせます。工具製造、機械工学、固定治具構築に取り組むブリンカアンドブロイヤー社は、アルミニウム(軟質から硬質まで)、銅、真鍮、軟鋼、焼き戻し鋼などのさまざまな材料を扱っていますが、新たなねじ加工工具を試す必要性が話題に上がることはありません。

ジェンス・ブリンカ氏(左)とマイケル・ブロイヤー氏(右):「弊社の工具に適した供給業者を一社見つけることが、弊社の目標でした。弊社の要求を満たすメーカーは、世界で2 社しかなく、その1社がオーエスジーです。」

ブリンカアンドブロイヤーGmbH は、1995 年、建築用の金属加工を始めました。徐々に一般的な金属や機械工学へとシフトしていき、2011 年、射出成形金型用工具の製造も事業内容に加わりました。市場の要求に答える形で、2 つの5 軸マシニングセンタとウォータージェットカッターを導入したことで、さらに製造対象が広がりました。現在、お客様は、特定の産業に限らず、例えば自動車、サプライ産業ポンプ製造業など、さまざまな産業分野に広がっています。ブリンカアンドブロイヤー社は、特注の小ロット部品の製造から、完成品の機械の製造(例えば、ガススプリングの設置のため)まで対応するのが強みとなっています。それまでブリンカアンドブロイヤー社が使用していた工具は、一部の例外を除いて、素晴らしい結果を出していました。会社所在地のシュタウトでよく使用されている材料の電気銅(E-Cu)がきっかけで変化が訪れました。経営者のジェンス・ブリンカ氏によると、この材料がきっかけで、オーエスジーとの関係が始まったそうです。

ブリンカ氏はこう語ります。「弊社は、電気銅に直径9 mm、深さ300 mm の深穴を開けるドリルを探していました。」「この問題を解決できたのは、オーエスジーだけでした。このときから、弊社はねじ加工工具も含め、すべてをオーエスジーに切替えました。」

ブリンカアンドブロイヤー社にとって、穴の数だけではなく、加工信頼性がそれにもまして重要でした。同社は、工具寿命が長いだけでなく、幅広い種類の材料に対して高切削速度を保証していたA タップのスパイラルタップ(A-SFT)を試してみました。

オーエスジーのA-SFT スパイラルタップは、工具管理を簡単にし、幅広い種類の材料、用途で優れた性能を発揮するように設計された汎用タップシリーズです。A-SFT は、安定して切りくずを排出でき、切削力を低減する不等リード溝設計を採用しています。ねじれ角は、切りくずが発生する面取り部分から、切りくずが排出される溝まで変化しています。この独自の形状により、切りくずを十分に制御することでワークから排出しやすいように小さくまとめることができます。このシリーズでは多様な切削条件に対応するため、粉末ハイスHSS と、オーエスジーが特許を取得したV コーティングを採用することで、優れた耐摩耗性を達成しています。

汎用的な使用:A-SFT は、高い信頼性を得るように設計されています。大胆な切削速度で加工する能力がある点で、経済性もあります。

ブリンカ氏は、宣伝文句にある切りくず形成に関する絶対的な加工信頼性と、さまざまな材料を高切削速度で加工するときの排出が一番気がかりでした。現在、A-SFT への切替えはほぼ終わっています。

A-SFT は、不等リード溝により、切りくずの生成と排出を最適化できます。

ブリンカアンドブロイヤー社が加工信頼性を重要視するのは、通常、高価な部品を製造する際、最終段階でねじ加工を行うからです。幅広い種類の材料で特殊な部品や小ロットの部品を製造する場合、最も重要なことは工具寿命ではありません。用途が多岐にわたることを考えると、計算はほぼ不可能です。サイクル時間を短縮する必要もありません。M2~ M16 に及ぶねじの種類と材料を考えると、備品管理が非常に懸念されます。8 つの機械のそれぞれが、各段階で、最低3 ~ 4 種類の材料を加工します。そのため、ねじ加工工具の種類が膨大になると、いつも準備時間に悪影響が出ていました。ブリンカアンドブロイヤー社の共同経営者であるジェンス・ブリンカ氏とマイケル・ブロイヤー氏は、経済的なタップを求めていました。二人の話では、M2.5 タップを使用して、1.2379 工具鋼に10 個のねじ溝を簡単に加工できるだけで経済的といえます。それまでの既製の工具では、この材料にひとつ分のねじ溝さえ加工できませんでした。

工具製造に用いる複数の材料で優れた性能を発揮:シュタウトでは、最大HRC 42までA-SFT タップを使用しています。

切削速度より、高い安全性

オーエスジーは使いやすさと長い工具寿命だけでなく、大胆な切削速度も保証しています。ブリンカアンドブロイヤー社の工場では、42CrMoに対して公称値が最大速度70 m/min であるものを使用することができました。

マイケル・ブロイヤー氏は次のように語ります。「ねじ加工工具の種類が多いと、いつ、どの用途に、どの工具を、どんな速度で、どのような送り量で使用するかを社員に教育しなければならないことが、一番の問題でした。」

幅広い種類の材料の一例。真鍮、銅、アルミニウムから、高硬度鋼、焼き戻し鋼まで。たった1 本のタップで、このすべての材料に対応できます。

「弊社は、切削パラメータを個別に設定する必要のないA-SFT を使用してその問題を解決しました。しかし、一人を除いて、さらに速い切削速度に挑む社員はいません。その反面、速度が遅いほど、タップの破損や欠損の危険性が高いこともわかっています。弊社は、刃先のむしれがその原因であることを付き止めました。幸い、A-SFT は他のタップとは異なり、本当の意味で切れ味が良いのです。」

もちろん、そのような切削速度を実現するには、最新の機械を使用して正確に同期をとることが欠かせません。それにもかかわらず、ブリンカアンドブロイヤー社は、軟質の銅、高強度アルミニウム、最大42 HRC の鋼などの材料にA-SFT を使用して、投資を回収できる見込みです。2 シフトシステムにより、工具の摩耗や破損は、1 パーセント未満まで減少し、品質保証の内容で保証を受けることができます。ブリンカアンドブロイヤー社の検査部門は、切替えのかなり前の2013 年12 月からタップ性能を比較しています。ねじ溝の品質を確認して、必要な再生処理を書き出します。同社の報告では、A-SFT は、既に要求を満たしていた従来タップと比べて、あらゆる面で優れています。